世の中的にはバブル後の不況がジワリと押し寄せてきて大変みたいだったけれど、私はとてもノンビリとした時間をおくっていて、苦労とか努力っていうのは別に人生に必要ないんじゃないかな、と思うようになった時だった。
だから当然、どこかにそのしわ寄せがいてったはずだけれども。
お気楽気分で手にとった『安穏族』は、ハードカバー全2巻のもの。
1話完結の短編集で、何度も読み返したものだけど、さすがに今も
内容まで詳しく覚えているものはほとんどない。
そう言えばこの人がブログに書いているように
後半は確かに戦争ものが多かった。
だから私も後半はあんまり好きではなかった。
戦争を知らない世代だからもちろんそれは実感ではないのだけ
れど、いつ来るのか変わってしまうのか、隣り合わせの脅威だけは
いつも感じてたからかもしれない。
好んで読み返していた前半の作品だけど、やわらかいタッチで
描かれる身近な日常物語は、本当はそんなにお気楽なものでは
なかった。
この人はブログで安穏族を、発表された'80年代の”ふわふわ、
ぶよぶよしたひ弱な時代の最良の部分”としているけれど、
私はそこに一瞬だけ乗り遅れてしまったため、自分自身を
見るのを止め、誰の迷惑も考えずにそれを妬んで欲しがる
我が儘をしていたのかもしれない。
まったりとした日々に、『安穏族』はそれに似合うようなタイトル
でやってきたけれど、実際の作品群はずい分とキビシイ現実だった。
苦労とか努力から逃げ出してしまいたかった私は、読んだ作品
の現実から目を背けようと必死だったような気がする。
安穏族―石坂啓自選集 (Vol.1) (石坂啓自選集)
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